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2017-03-03 20:43 | カテゴリ:たからもの
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第八話執筆者:詠羅さん








事件後、キリヤナギは、落下時に自己憑依した主犯グループの物品回収を始めた。
主犯グループの証言から、犠牲者も数名でていたものの、爆弾の設置が第三者のものであり、庭も落とさなければ巻き込まれていたとされ、今回の件でキリヤナギは不問となる。
審議の場からようやく解放されたキリヤナギは執務室に戻りソファーへ乱暴に寝転んだ。

「づがれだぁぁ」
「お疲れ様です。後片付けも大変ですね」
「今まで上手くやって来た分、びっくりされたんだろうけど、まさかこんなにかかるなんて……」

事件から、既に一月が経過していた。
モーグ領空にて大規模な砲撃戦と、爆破による墜落で古き民のインスマウスを含めた周辺各国が圧力をかけてきたのだ。
人質の救助だけならまだしも、砲撃で墜落させたとなれば話は変わってくる。
ややこしかったのは、爆弾の設置がキリヤナギによるものだと言う誤解と、アルカード・ロアの攻撃が過剰であったのでは無いかと言う事だった。
しかし、潜入戦をしたジンとハルトが、第三者アステガのものであると証言した事と、爆発から救助までに一刻を有していた事が考慮され、なんとか処分は免れた。

「犠牲者が出た事に、言い訳はしたく無いけど……あの爆発さえなければ、みんな生きて帰れたと思う」
「状況的に、下手に救助へ向かえば巻き込まれていました。少なくとも40名以上の搭乗員がいましたし、あまり気負いされないでください」
「……動けなくしたのは僕だよ」

逃げられない状態にしたのは、あの時船上に居た4名だ。もし彼らにまだ逃げる体力を残せていたのなら助かっていたかもしれない。

憂鬱な表情をみせるキリヤナギに、セオは呆れたため息をつく。
死亡者が出た時、キリヤナギはいつもこうして沈み、一週間は元に戻らない。
セオからすればいい加減慣れてほしいとも思うがキリヤナギのこの性質を、変えたいとまでは思っては居なかった。

横になったままマントを外し、床へと落とすと、セオはそれを拾ってハンガーにかけてくれる。
しかし、淹れてくれたコーヒーも今日は飲む気になれなかった。

疲労からかうつらうつらしているキリヤナギは、放置すれば眠ってしまいそうにも見える。
セオの掃除の音が響く中、ノックなしで執務室の扉が開いた。

「おや、グランジ。呼ばれたのですか?」

グランジは今日、本部に来なくていいと伝えていた。
彼はキリヤナギが落ちこむと塩を塗ってくるので、また喧嘩まがいになるし、面倒な事をわざわざ呼び寄せたくはなかったからだ。
呼ばれていないグランジに対し、キリヤナギは眠ったフリをする。
わざわざ来たのは用事があるからだろうが、セオに言伝として伝えてくれるだろうと考えた。

「必要なら伝えておきますよ」
「なら、もう少しマシな寝方が出来ないのかと伝えてくれ」

「起きてるの分かってるならそう言ってよ!」

茶番にも程がある。これだから話したくないのに、グランジはそれを許してくれない。

「何……、またいいたい事あるの?」
「アミュレット家から、招待状が届いていた」
「招待状……?」
「来月、ハルトさんが結婚するらしい」

キリヤナギは一瞬、グランジが何を言ったのか分からなかった。
不満な表情が一気におどけて頭の中でグランジの言葉を繰り返す。

「婿養子だそうだ」
「えっ、え?? へ? 」

アミュレット家と和解した話は聞いていた
プロポーズの現場もみたし、婚約して再び側に居られるようになったと……、メールで見て安心していたが、これは先週のやり取りだ。
そのメールで結婚など一言も触れて居なかったのに早いと思う。

招待状にはキリヤナギとグランジの名前が続き、数名と来ても構わない旨が追記されていた。
アミュレットの紋で封をされているのは、事実である証明にもなる。

「これを持ってきてくれたの?」
「……」

グランジは何も言わず向かいに座り、セオが入れたコーヒーを口にする。
ずっと口喧嘩ばかりしていたのに、グランジなりにきっかけをくれたのだろうか。

「グランジ……」
「……?」
「ごめんね。僕、がんばる」
「……普段からそうあればいい」

元気が出た。
ハルトが最も望んでいた結末を得ることができたなら、それはきっと何よりの幸いだと思うからだ。

「結婚式たのしみだなぁ……セオもくる?」
「私は顔を少し知っている程度ですから、遠慮しておきます」
「そっか。お祝いも準備しないとね」

気力を取り戻したキリヤナギは、その日からゆっくりと結婚式の準備を始めた。
祝典用の服や祝い品などを考えるなかで、同じく招待されたカナトからも連絡があり、一度四人で集まることになる。

「祝い品が同じになってはいけないからな」
「別に趣味も違うし、格も違うじゃん……」

「格?」
「僕は貴族でも下っ端だからね」

「位の話はいい。何を贈るつもりだ?」
「ここは騎士らしくやろうと思ってるよ?」
「……来てよかったと、今思ったぞ」
「え……、本当に??」
「実家との兼ね合いではあるが、婿入りだからな。貴様が足ならば、私が物にしよう」
「あぁー……」

毎度分かるように話してくれとジンは思う。
グランジはカナトの持ち込んだ焼き菓子を食べているし、この2人になるといつも蚊帳の外だ。

「そうだね。ハルトは一般人だし……」
「皮肉か、必要なものか、二分されるだろうな。ハルト殿の後ろ盾になる為にも、手を抜かないつもりだ」

「後ろ盾って?」
「貴様ならどうも思わないだろうが、貴族達からすれば、婿養子はいい妬みの対象だ。今回は特に、モーグの貴族にも目をつけられ、それを押しのけたのなら、風当たりは強いだろう」

「嫌がらせとか嫌みとか言われたりするから、それをされない為に、ちゃんと味方が居るって言う証明が必要なんだよね。僕もウォレスさんに結構助けられたし」
「いじめじゃないっすか……」
「そうだよ。だから僕らが味方になることで、下手にちょっかいを出せないようにするのさ。影響力が強い人がいると、無碍に扱えなくなるからね」

一般人から婿入りをするハルトは、冒険者から貴族に立場を変える。立場が変われば周りの人が変わり、味方が必要になる。
結婚式は、ハルトに味方がどれだけいるか図ることができるいい機会だ。
キリヤナギもだが、目の前の彼が真面目に考えるのであれば、心配はない。

「騎士の貴様とかぶれば、所詮その程度であると見られかねん」
「なるほどね。でも天界の貴族が味方だって言われたら、誰も文句言えないよ」
「昔は重くあったが、物は使いようだと思う」
「なにそれ、僕の事?」
「さぁな」

言い回しが気になるが間違えてはいない。
面倒な世界だが、ハルトが自分で望んだならそれを応援したいと思うからだ。

「そいやカナト、聞きたい事あってさ……」
「ジン、どうした?」
「俺、タイタニアって人は飛んで運べないとか、どっかで聞いた気がしたんだけど……」
「そうだな。運ぶ構造はしていない」
「城の時、運べてたじゃん? あれはなんかの魔法? 」
「あぁ、あれは……」

「あれは紙飛行機の原理だよ。低い場所から高い所にいくなら翼に力が必要だけど、逆に高い位置から低い位置に行くなら、風に乗ってゆっくり降りて行けるんだ」
「へー」
「飛空城と庭の高低差があるからこそ出来た感じかな。城から城に移る時も、最上階からホライゾンにお願いしたし」
「……」
「怖かった?」
「すげぇびっくりしたけど、今思うと……楽しかったなぁ……って」
「あっ、本当に! 分かる分かる!グライダーだからすごく楽しいんだよね。タイタニアさん的にはやっぱり重いし高さも必要で危ないから、あんまり長時間は無理なんだけど、上手い人だと気流に乗って上昇したりもできるから、すごく面白いんだ」
「へぇ……」
「でもやっぱり危ないから、前の時みたいに緊急時だけにしてね。手が滑ったりしたら、タイタニアさん助けられないし」

そう言われると確かにぞっとする。
アステガは空中で自己憑依を行っていたが、自己憑依を完了するにも30秒は必ずかかるし、高さによっては間に合わない。
パニックを起こしてしまえば、まず助からないだろう。
そう考えれば、よく捕まって入られたと思う。

「そうだ、あのアステガって人は……?」
「うーん。色々探ったけど、分からなかったな……」
「そっか……」
「行動を聞いた限り、主犯グループの仲間ではなさそうだったから、深追いはしないつもりだよ。早めに退散したって事はそれだけ面倒だったんだろうしね」

「貴様と関わるのが……か?」
「主犯グループは仲間だと認識してたみたいだからね。それだけ裏に通じてるんだと思うよ」
「”叩けば埃が出る”と分かっていたなら確かにあの行動も納得がいく」

「あの人、やっぱりやばい奴だったんすか……?」
「やばいと言うか、僕に触りたくない時点で悪い事に覚えがあるんじゃないかって事。何もないなら素直に保護されて、 安全にアクロポリスに帰れたのに、わざわざ仲間と帰っちゃったからね」

探さないのはキリヤナギからの心使いだろう。
望まない相手を探す事は迷惑にもなり兼ねない。ましてやそれが関わりたくない相手なら、素直に手を引くべきだと思う。

「ともかく、今は目前のパーティーを楽しもうよ」
「そうだな。久しぶりの祝いの式典だ」

結婚式の参加はジンも初めてだ。
戴冠式の時のように寝坊をしないようにしたい。

そこからまた一月が経ち、彼らはアミュレット家の屋敷へと参列した。
広い庭園に設けられた会場には、もう様々な人々が集まり、談笑や食事を楽しんでいる。
煌びやかな衣服を着込んだ彼らは、アクロポリスだけでなく様々な地域から訪れた貴族で、殆どが取引先の人間だろうとも思われた。
カナトの実家での舞踏会は、政治的な貴族と言うこともあり緊張した空気ではあったが、この場の空気は富裕層の集うパーティーにも近い。
普段よりも気楽にもなり、ジンやグランジも肩の力を抜いているようだった。
そんな中で、一際フォーマルで落ち着いた服装のアークタイタニアは、自分より年上にも見える貴族達に囲われ談笑を楽しんでいるようにも見える。

「カナトはやっぱり人気だね。立場上仕方ないけど」
「そうなんすか……。なんか無理してそうだけど……」

追いやられてしまったのか、ジンがキリヤナギの横で不安そうにそれを見ている。
以前なら、カナトの表情や変化を気にした様子も無かったのに少し感心してしまった。

「分かるの?」
「え、何となく……ですけど、あんな顔普段みないし」
「じゃあ、助けに行ってあげなよ。適当に言い訳つけて、こっちに引っ張ってきて」

シャンパンを嗜むキリヤナギに言われ、ジンがカナトを駆け足で呼びに行く。
振り返ればグランジもローストビーフを食べているし、今の所この会場は安全だ。
キリヤナギの知り合いは居ない為、声をかけられることもないだろうと思ってはいたが、ふと視界に此方に軽く手を振るドミニオンがいる。

「キリヤナギ。来てくれたか」
「これはこれは新郎殿。ご機嫌麗しゅう」
「よしてくれ、恥ずかしい」
「散々言われるよ。おめでとうハルト」
「ありがとう。キリヤナギ、是非楽しんでくれ」

現れたイクスドミニオン・グラディエイターのハルトは、白いネクタイに礼装を纏い、胸には赤い薔薇を刺している。
普段黒服を纏うハルトとは違い。白がベースの礼装で違った印象にも見えた。

「僕以外に挨拶しなくて平気なの?」
「あぁ、他にも来ている筈なんだが……、まだ見えなくてな」
「そっか。みんな楽しんでるよ。呼んでくれてありがとう」
「俺も光栄だ。だが……キリヤナギ。あいつも……くるのか?」
「どうだろう。とりあえず僕の名前で誘ったけど、顔見せてくれるかは分からないかな」
「そうか。見かけたら呼んでくれ、すぐいく」
「うん。また声をかけるよ」

そう2人で話す中。
カナトを呼びに行ったジンが、2人で戻ってきた。
ジンはハルトの礼装に少し呆然として、はっと我に帰る。

「ハルトさん、おめでとうございます!」
「ありがとう。ジン、前は助かった」

「ご無沙汰しております。ハルト殿」
「カナトさんも、俺みたいな奴の為にありがとう……」
「とんでもございません。ティア嬢と結ばれる瞬間に立ち会えて私も大変光栄です」

「カナト、癖になってね……」
「……そうか?」

ハルトが固まっている。
貴族であることに慣れていないのか、返答にごまったようだった。
冷や汗すらかいているハルトに、キリヤナギは笑いを堪える。

「そんな事よりキリヤナギ、今朝送られてきたがあれは、貰っていいのか?」
「へ? 祝い品だよ。当たり前じゃん」
「しかし、あれは……」

「何送ったんすか……?」
「騎馬だけど?」

……。

「馬!?」
「そうだよ? 僕は騎士だからね。もしかして宿舎無かった?」

「いや、それはあるが……」
「必要なものだろうし、2人で乗って出かければいいさ。何か問題あった?」
「ローレンス父さんが、驚いて俺の出生から家系まで調べ直していた……。今も混乱して寝込んでいる」
「なんかよく分からないけど、……ごめん」

唯の一般市民かと思えば、貴族向けの祝い品が送り込まれ相当驚いてしまったのか。
キリヤナギで寝込んでいるなら、横の貴族はどうなのか。

「カナトは何を送ったんだよ……?」
「……剣だ。天界で打たせた物だな。護衛騎士上がりと伺ったので、我が家に恥じぬよう作らせたものだ」
「メロディアスの名で送られてきて、思わず電話をして確認された。顔を合わせたいと仰せだったが……」
「体調を崩されているのなら、致し方ないでしょう。無理されぬようお伝えください」

寝込んだのはおそらくこのせいか。
ティアに向けた物ならまだしも、ハルトに向けて送られてきたのだから、確かに驚いても仕方がない。

「カナトさんは、俺よりもティアの方だと思って……おりましたが……」
「確かに以前コンクールでご紹介頂いたのはティア嬢でしたが、これからの事を考え、勝手ながら貴方の側に着かせて頂く事に致しました。難しい世界です。後ろ盾は必ず必要となる。自身を守る盾としてお持ちください」

一般から貴族へ成り上がることは、貴族達からも余所者として疎まれてしまうものだ。
カナトやキリヤナギが味方に付く事で、その全てが払拭できる事はないが、身を守るもう1つの手段となればいいと願う。

「ありがとう……カナトさん」

手を差し出され、カナトは迷わずハルトと握手を交わす。
その様を他の貴族達は外から目に焼き付けるように眺めていた。
そんな中、庭園の入り口から、ラフなパーティードレスや礼服を纏う人々が姿を見せる。
ハルトに手を振る彼らは、周りの貴族達よりも空気が違っていて冒険者であると一目でわかった。

「行ってきなよ」
「あぁ、悪いなキリヤナギ。カナトさんも楽しんでくれ」

「はい。良い一日をお過ごしください」

やっぱり癖になっていると、ジンは苦い表情でカナトを見ていた。

「ジン、少し付き合ってくれ」
「どこに?」
「リフウが来るらしい」
「は? マジで……」
「よく分からないが、ブーケトスに参加したいらしい。相手は決まっているのにな……」

素直な感想なのか。嫌味なのか。
ジンは何故か酷いストレスを心に感じた。

「入り口で待って居なければ、誰に突っかかられるか分からない……」
「もうお前1人で行けよ」

キリヤナギが必死に笑いを堪えているのが分かる。
むしろ笑っている。
グランジは相変わらずスモークサーモンを上品に食べていて、その様が何故か女性の気を引いていた。
リフウは、カナトの実家で暮らしており、カナトと将来を約束したフィアンセだ。
ジンは彼女と言うことにしているが、時々こぼす惚気発言がひどくイライラする。
分かって行っているのか無意識なのかは知らないが、とにかく腹がたつ。

「ジン、行ってあげてよ。リフウ姫が来たらカナトより大変な事になるから……」

笑いながら言われても説得力が無い。
しかし、カナトがしょんぼりしているのは、少しいいすぎてしまったか。
仕方がないという気持ちで、ジンはストレスを振り払い。カナトに同行する。

「楽しそうだな……」
「楽しいよ。来てよかった」

涙ぐんだキリヤナギをみて、グランジは気の緩みを感じた。
しかし、まだ素面を失ってはいない。

食事の手を止めたグランジに、キリヤナギは手のシャンパンをテーブルに置いた。
キリヤナギの呼んだ友人が現れたからだ。
見劣りしない礼装を纏い、フォーマルな帽子を深く被る彼は、暗黒の尖った翼を揺らす。

「来てくれて嬉しいよ。アステガ」
「てめぇがキリヤナギが……。ナメた真似しやがって」
「別に舐めてないよ……。ダメ元だったし、素直に嬉しいかな」

連絡が来たのは一月ほど前だった。
アステガのナビゲーションデバイスに、結婚式の招待状が添付されて来ていたのだ。
ご丁寧に偽名まで添えて、名乗るように書いてあった。

「礼装も似合ってよかった」
「酒場の奴に渡されて何かと思えば……、なんで分かった?」
「ナビゲーションデバイスの通信記録から位置情報を選出して逆引きしたんだよね。ジンのデバイスと一緒に動いてた記録があって特定した」

えげづない方法だとアステガは素直に感想した。
デバイスそのものは、元宮の地下にあるサーバーからやり取りされていると聞いていたが、偽名を使っているのにやられたと思う。

「結構面倒くさかったよ。座標は全部数値だし、範囲が狭かったからね」
「そんなストーカー野郎が、この俺に何の用だ?」
「ストーカーって……。君を呼びださなくていいように取り計らうの大変だったんだから、そのぐらい許してよ」

何を言い出すのかと思えばアステガも思わず口に詰まってしまう。役所に連行される事を考えれば、確かにマシと言えばマシか。

「……何で爆破したの?」
「俺がそうしたかったからだ」
「……そっか」
「それだけか?」
「別に、ジンが助けられたのは事実だし、ティア嬢を逃がしてくれたし、通報してくれたのも君でしょ? こんなに助けられて、今更爆破した事に怒れないし、なら僕の言う事は1つだよ」
「……」
「ありがとう……」
「は?」
「今回は、助けられたからね。直接伝えたかっただけさ」
「……」
「……別に何かしようとも思ってないよ? 捕縛も考えてないし」
「何故だ?」
「嫌でしょ? 今回は僕もお咎めなしだったからね」
「俺を取り逃がしたら同じじゃねぇのかよ」
「君よりもあの主犯の方が悪質だった。死亡者はでたけど、深く追求はされなかったし、僕がちゃんと話すなら、今回は君には触らないって事で落ち着いた」
「……」

アステガは納得していないようだった。
信頼していない面持ちにキリヤナギは笑い、空のグラスを彼に渡す。

「くだらねぇ……」
「そうかな? でもせっかくだし乾杯しようよ」

シャンパンをグラスに注ぎ初めるキリヤナギは、笑っていた。
言動から酒に酔っているのかと思えばそうでもないらしい。

「事件解決と、2人の幸せを願って乾杯……」

キリヤナギからグラスをぶつけ、高い音が鳴った。
警戒を解かないアステガをきにせず、キリヤナギはシャンパンを楽しむ。
だがアステガは、その後ろにいるもう1人のエミル族から殺気を感じていた。
手を出せば容赦はしないと、何時でも動ける準備があると言うように立ち尽くす、エミルのホークアイ。
その後ろには、いつの間にかツイン髪の少女まで姿を見せている。
空の仲間から聞いた、二機の庭を同時に落としたロアと言う存在らしい。

「グランジ。気にしなくていいよ」

キリヤナギが声をかけるとツインの髪の少女は、蝙蝠が散るように姿を消した。
グランジはアステガに一礼し立ったままその場に控える。

「もう1つ、君に見せたいものがあるんだ」
「……?」

キリヤナギの視線の先には、屋敷への入り口と共に赤い絨毯が敷かれ庭園の中央まで続いていた。
そしてその場を淡い桃色にヴェールを被る少女とドミニオンが皆に祝われながら歩いてくる。
クラッカーにシャンパン、紙吹雪やブーケを投げられ2人は参列した皆から様々な形で祝福されていた。
アステガはその2人に見覚えがある。

「君のおかげで守られたものだよ」

アステガは何も言えなくなった。
照れた表情を見せる新郎と、満面の笑みで寄り添う新婦は、中央のひな壇で見つめ合い誓いのキスを交わす。
笑顔が溢れるその空間に、アステガは目をそらし歩を進めた。

「最後までいないの? 引き出物あるみたいだけど?」
「興味がない。俺は帰る」
「そっか……。また連絡するね」
「いらねぇ」

立ち去るアステガを、キリヤナギは止めなかった。
ハルトに抱き上げられたティアは、抱きついてさらに頬へキスをする。
グランジはアステガが立ち去ったのを確認し、デザートに手をつけ始めた。
賑やかになる会場で、盛大な結婚式が始まる。



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END
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